大原守民の漢方通信

漢方の考え方を紹介するブログです

花粉症の漢方療法 その⑦

花粉症の漢方療法 その⑦

ヒトは生命を維持していくためには、外からエネルギーを取り込む必要があります。

消化管は、外から入ってくる食物、細菌、ウイルス、毒、化学薬品などの全てを異物と捉えていて、その異物が生命維持に必要なものか否かを識別しています。

それゆえ、細胞分裂の過程で1番最初に消化管が形成されますし、小腸の粘膜には多くの神経細胞が存在しています。

脳は消化管からの情報を最も優先して、他の臓器の神経細胞から来る情報は、後回しにする仕組みになっています。

特に、小腸の消化管神経細胞は高濃度の糖質に対しては、素早く反応して他の異物よりも最優先に脳に伝達します。

すると、脳では危険と判断して、危険回避の生理反応が起きます。

それが摂食性のストレス反応と言われるもので、このストレスを回避するために脳の情報量が増え、頭部の血流量が増加します。

それにより、脳温や脳圧が高まり頭部に位置する鼻、目、咽などの粘膜は腫脹して水分量の多い状態になります。

この状態の粘膜に花粉の物理的刺激が加わり、粘膜が水分であふれ出るようになったのが花粉症と考えています。

小腸粘膜上にある免疫機構を腸管免疫と言いますが、その腸管免疫が正常に機能していれば、消化管神経細胞の興奮を静めてストレス反応を解放してくれます。

また、IgE抗体も減少させることが知られていますが、腸管免疫が低下しているとストレス反応を抑えることが難しくなります。

総国民病と言われる花粉症だけでなく、その他のアレルギー疾患や、自己免疫疾患などもこのストレス反応に起因しているところが大きいと考えております。

ですから、花粉症の漢方薬は、消化管神経細胞に作用して粘膜上の炎症を沈める「本治《ほんち》」という根本的な改善と、症状を抑える「漂治《ひょうち》」の漢方薬を組み合わせて治療していかなければならなりません。

実際、花粉症の人に腸管免疫を調整する『証陽散EX《しょうようさんEX》』と、ストレス反応を鎮めて、水分代謝を調節する『五苓黄解《ごれいおうげ》』を併用した場合、明らかに『五苓黄解』単独で使用したときよりも高い効果が得られております。

花粉症で1番重要なことは、ストレス反応をなるべく起こさないような生活習慣を実施して、漢方薬による体質改善をすることにつきると思います。

花粉症という生体の反応は必ずしも悪いものではなく、健康のバロメーターと捉えることが大切なことと考えています。

花粉症の症状が重くなったりしたら、体が危険信号を送っているのだと考えて、生活習慣を改め、漢方療法で体のアンバランスを取り戻すようにすると良いでしょう。