大原守民の漢方通信

漢方の考え方を紹介するブログです

花粉症の漢方療法 その⑤

花粉症の漢方療法 その⑤

霊長類が一億年ほど前に発生して、人類の祖先が現れたのが400~300万年前と推定されています。

人類が小麦や米などの穀類を食べ始めたのは、わずか1万年前の農耕文明以降で、それまでは採集、狩猟、漁労などによって生計を立てていました。

この時代までは、血糖値が上がるのは身の危険を感じた時だけで食べ物で血糖値が上がることは遺伝情報としてDNAに刻まれていませんでした。

ヒトも動物も、その長い歴史の大半を血糖値が上がることがなかったため血糖値を下げるホルモンはインスリンの一種類しか必要がなかったのです。

これに対して、天敵に襲われた時には直ぐに血糖値を上げてエネルギーを産生しなければなりませんので、血糖値を上げるホルモンは進化して4種類も存在しています。

それがグルカゴン、アドレナリン、コルチゾール、成長ホルモンなどです。

よく糖質を摂らないと脳が働かなくなると言われていますが野生動物は糖質がゼロの食物でも、脂肪や蛋白質などの代謝によってケトン体という物質を作り、それをエネルギーにできる仕組みを利用しています。

人間も動物と同様の仕組みを持っていて、

厳しい環境下でも生き抜いてこられた訳なのです。

しかし、産業革命が18世紀半ばから始まり、食物の精製技術が飛躍的に進歩して純度の高い小麦、米、砂糖、アルコールといったものが作られるようになると、従来の食物ではありえないほどの吸収速度で急激な血糖値の上昇を引き起こすこととなりました。

元来は天然の食物であるものが、化学物質へと変化していったのです。

ヒトが身に危険を感じた時にしか血糖値の上昇が起こらなかったことが、日常に起こるようになったわけで身体にとっては想定外のことでした。

急速な血糖値の上昇が起こると、襲われた時と同様に交感神経の亢進が起きてしまいます。

これが、摂食性のストレス反応と言われるものになります。

このストレス反応が起こると、抗ストレスホルモンのステロイドホルモンなどが分泌され頭部血流量が増加して脳動脈圧が高くなります。

これにより頭部に位置する鼻、目、咽などの粘膜に腫脹が起きて、花粉などの物理的刺激で粘膜から水分があふれ出し、鼻水、くしゃみ、涙、痰などが発生します。

また毛細血管は、うっ血して血流量が増え充血や、粘膜が腫れて鼻が詰まるといった現象も発生します。

漢方療法ではストレス反応を鎮めるための漢方薬や体質改善の漢方薬と同時に、糖質制限の指導をしなければなりません。