大原守民の漢方通信

漢方の考え方を紹介するブログです

カゼの漢方療法その①

  • カゼの原因のほとんどがウイルス感染

カゼの原因の90%以上がウイルスによることから、一般にカゼと言っているのは、ウイルスによる上気道感染症を指します。
また、ウイルスによる消化管感染症は、「お腹の風邪」などと分けて呼んでいます。
カゼの病原となるウイルスまたは細菌が特定できた場合は、それぞれの疾患名で呼び、病原がインフルエンザウイルスによることが検査で特定されれば、一般のカゼとは別に「インフルエンザ」と呼ばれることになります。

 

  • 西洋薬でカゼが治ることはない

西洋医学では症状を緩和する対症療法を採用し、総合感冒薬や解熱剤、咳止めなどの薬を使用し、インフルエンザには抗インフルエンザ薬を使うことになります。
今まで頻繁に使用していた抗生物質はウイルスには効果がなく、安易な投与は耐性菌の出現を助長するとして、今では厚生労働省は投与しないことを推奨しているのが現状です。
西洋医学のカゼに対する考え方で、熱が上がれば解熱剤で下げて、熱が下がれば改善したととらえていますが、東洋医学の考えでは、発熱は病気と闘っている生体の反応と捉え、熱を無理に下げることはしません。
これは、カゼの初期から熱を下げると、体がウイルスと戦うのを止めてしまって、逆に病気を長引かせてしまう危険があるという考えによるもので、実際にウイルスは38℃以上で活性が停止するとされています。
また抗インフルエンザ薬を使うと十分な免疫が獲得できないため、毎年のように罹りやすく、薬剤耐性ウイルスを作ることにもなってしまいます。

 

カゼの漢方薬と言えば『葛根湯《かっこんとう》』が有名ですが、この処方の中心的な役割を果たすのが『麻黄《まおう》』という生薬になります。
この麻黄の働きに交感神経を亢進させて、肺を温めて、深部体温を上昇させ、発汗をうながす作用があります。
初期のカゼで、発熱があるのに発汗ができなくて、邪気《じゃき》がこもっている場合には、発汗とともに邪気を追い出すことで、速やかに症状の改善が見られます。
身体は、ウイルスが破壊されると、それ以上体温を上げる必要が無いので、自然と汗腺を開き、汗を出して体温を下げていきます。

 

  • 安易に西洋薬を使うのは危険

カゼは下手をすれば、命をも奪いかねない急性の疾患ですので、深部体温を上昇させて免疫機能を亢進させることが大切ですが、脳だけは高熱から守ってあげなければいけないので、額や首を冷やしたりして物理的に頭部の熱を取ってあげればよいのです。
解熱剤のように全身に作用させて一時的に熱を下げても、ウイルスは死んでいないので再び増殖することさえあります。

まずはそのことを理解しておくことが大切です。