大原守民の漢方通信

漢方の考え方を紹介するブログです

花粉症の漢方療法 その②

花粉症の漢方療法 その②

花粉症の漢方治療は、症状そのものを抑える治療が中心になりがちですが花粉症になりやすい体質を改善して病気になりにくい体を作ることが理想です。

東洋医学では、花粉症の症状を体内の水分バランスの異常と捉えて体内で発生した内湿《ないしつ》を取り除くための漢方薬を使い分けます。

花粉症の漢方薬としてよく用いられる処方としては鼻水、くしゃみ、などの適応がある『小青竜湯《しょうせいりゅとう》』を中心に処方されることが多いかと思います。

『小青竜湯』を花粉症の基本処方にして、体質により熱証《ねっしょう》もしくは寒証《かんしょう》の漢方薬を併用します。

中には熱証と寒証の混在した寒熱錯雑証《かんねつさくざつしょう》を呈するものも存在しています。

私の感覚ですが、花粉症の患者さんの50%が寒証で20%が熱証で残りが寒熱錯雑証と考えています。

青竜湯は寒証に使う処方で、熱証の体質には少々使いづらい面もありますが、寒熱錯雑証には使えると考えていますので併せて70%以上の方には有効と考えています。

寒証に使う漢方薬としては麻黄附子細辛湯《まおうぶしさいしんとう》、葛根湯《かっこんとう》、葛根湯加川芎辛夷《かっこんとうかせんきゅうしんい》、玉屏風散《ぎょくへいふうさん》などがあります。

また、慢性的な症状で体を温める機能が低下している場合などは人参湯《にんじんとう》、熱を運ぶ血の不足の場合は当帰芍薬散《とうきしゃくやくさん》、水の停滞で冷えている場合には五苓散《ごれいさん》や苓桂朮甘湯《りょうけいじゅつかんとう》、冷えが強いものには附子《ぶし》などを用いて根本的な治療をしなければなりません。

一方、熱証の基本治療は冷やすことですので、急性の炎症や精神的な興奮による熱感などには麻杏甘石湯《まきょうかんせきとう》、清上防風湯《せいじょうぼうふうとう》、辛夷清肺湯《しんいせいはいとう》、桔梗石膏《ききょうせっこう》などで清熱をします。

また熱や炎症が消化管にはいり便秘している場合には大黄甘草湯《だいおうかんぞうとう》や桃核承気湯《とうかくじょうきとう》の排便作用で熱を逃がします。

慢性的な症状で、体を冷やすための水が不足している場合は麦門冬湯《ばくもんどうとう》、炎症を抑える能力が低下している時には当帰芍薬散《とうきしゃくやくさん》、血が老廃物などの炎症の原因を含んだまま滞る場合には桂枝茯苓丸《けいしぶくりょうがん》などを用いて根本的治療をします。

春は花粉症やカゼの流行と受験が重なりますが、漢方薬は眠くならないし頭がさえて勉強の集中力も増しますので受験生にとってはうってつけの療法といえます。